活ウチダザリガニの販売禁止 特定外来生物指定で

2006年02月06日10時23分

真っ赤にゆで上がったウチダザリガニの姿ボイル。地元の飲食店では「レイクロブスター」の名で出される=北海道釧路市の阿寒湖畔で

ボートに水揚げされたウチダザリガニ。つめが大きいのが特徴だ。漁期は5月から11月=北海道釧路市の阿寒湖で

 高級フランス料理として人気が出始めているウチダザリガニが、2月から外来生物法の「特定外来生物」に追加指定され、個人客への生きたままの販売が禁じられた。環境省の許可を得れば料理店には売れるが、主産地の北海道釧路市の阿寒湖漁協は「個人客も多く、駆除にもなるのに」と困惑している。

 ウチダザリガニは北米原産で戦前、食用などに水産庁が国内に移植した。北海道では世界自然遺産・知床の半島基部など道東全域に広がっている。阿寒湖では在来種ニホンザリガニを駆逐し、国の特別天然記念物マリモにも巣くう厄介者だ。

 福島県や滋賀県でも繁殖しているが、漁業権を取って出荷しているのは北海道の阿寒湖と塘路湖の2漁協だけだ。阿寒湖産は十数年前から「レイクロブスター」の名で売り出し、東京の帝国ホテルやオテル・ドゥ・ミクニなど一流レストランでも使われている。阿寒湖漁協は04年度、5.5トンを漁獲し、1キロ約1300円で販売した。

 特定外来生物への指定後は、環境省の許可があってもこれらレストランなどにしか販売ができなくなり、観光客や話を聞きつけて注文する個人に送ったり渡したりできない。在日スウェーデン人有志が毎年、東京の同国大使館で開き、楽しみにしている「ザリガニパーティー」用にも、生きた状態での出荷は難しい。

 漁協では「生きたまま送るからスープなどの料理も出来るし、ボイルもうまい。後から出来た法律が、なりわいを侵すのはおかしい」と批判する。

 環境省は今回、中華料理で人気の上海ガニなど43種類の動植物を特定外来生物に2次指定したが、養殖ではなく自然に生息する生物を漁業権に基づき漁獲している例はウチダザリガニだけ。漁業者には「もっといっぱいいるアメリカザリガニは規制対象ではないのに」などの不満がある。

 環境省野生生物課の長田啓・移入生物専門官は「アメリカザリガニは蔓延(まんえん)しすぎて指定の効果が薄い。趣旨を理解してほしい」と話している。