◇マニア人気、ほかにも取引か
札幌市手稲区の爬虫(はちゅう)類・熱帯魚販売店の経営者(28)が、外来生物法で販売や飼育が禁じられているオーストラリア原産のケラクス属ザリガニ「ヤビー」を売っていたとして、札幌手稲署に逮捕された。縄張り意識が強く攻撃的な性質で、海外では在来種を駆逐するなど環境への影響が出ているヤビー。マニアの間で人気が高く、ひそかに取引されている例がほかにもあるとみられ、道警は取り締まりを強化する方針。
■摘発の端緒
「1匹くらい違法な生物を扱っているのでは」。7月下旬、同署生活安全課の50代の捜査員が同店を訪れたのは、「膨大な数の生き物を扱っている」という情報がきっかけだった。
ヘビやクモ、ムカデなどの入った水槽が所狭しと並ぶ店内。捜査員がぐるりと見渡すと、鮮やかな群青色で大きなハサミを持つザリガニが目を引いた。1匹7万9800円の値段が付いていた。「ザリガニと言えば茶色なのに青。あまりにもきれいすぎる。これは違法な生き物じゃないか」。刑事特有の勘。照会した結果、06年2月に特定外来生物に指定されたヤビーと判明した。
同署の調べでは、経営者は特定外来生物に指定される以前、道内のマニアから1匹2000〜3000円で10匹仕入れ、これまでに8匹は売ったとみられる。しかし、購入先までは解明されていない。
■繁殖させるケースも
市内のペット店によると、ヤビーは青が鮮やかであるほど人気が高い。指定以降、「『持っているとまずいから譲る』と言って引き取りを求める人もいる一方で、『扱っていないか』と尋ねてくる客もいる」という。
東京都内のあるペット店は、つがいで飼って繁殖させているマニアもいる、と明かした。「指定前は2万〜3万円程度だった。その数倍でも需要はあると思うが、摘発されて罰金を取られたら割が合わない」。同法によると、特定外来生物を売買するなどした場合、最高で3年の懲役か、個人であれば300万円、法人であれば1億円の罰金が科される。
ただ、指定以前からペットとして飼っていた場合、届け出れば1代限りの飼育は認められる場合もある。道内のヤビーを含むケラクス属の許可申請件数(8月上旬現在)は7件あり、うち6件はペット用。環境省道地方環境事務所は「ペットとしての飼育が違法だと知り、むやみに野外に放されることが一番困る。違法性の度合いによっては警察への告発も検討する」と話している。