【美幌】特定外来生物ウチダザリガニを発酵処理し、肥料にするための実証試験が、網走管内美幌町の美幌博物館で行われている。北米原産で繁殖力が強く、生態系を壊す恐れのあるウチダザリガニの殻の成分に注目し、有効活用の方法を探る。既に20キロの肥料ができ、野菜などの生育への有効性を確認する栽培実験を始めている。
同博物館によると、ザリガニの殻にはキチン質や窒素、リンなどの肥料成分が含まれている。ズワイガニの殻を使った肥料は市販されており、同博物館はこの肥料を参考にして、4月中旬からウチダザリガニを原料にした肥料作りを始めた。
美幌川支流の鶯沢川で捕獲した小さめの約600匹(約2キロ)を細かく砕き、これに米のもみ殻や米ぬか、おからを混ぜ、米袋で発酵させた。発酵温度は、約3週間で植物の病原菌が死滅する60度に達した。水分が少なくなると10度前後まで下がったが、水を加えると再び発酵。これを繰り返し、5月下旬に約20キロの肥料が完成した。
この肥料と土を1対20の割合で配合し、ミニトマトやハツカダイコン、アサガオの栽培を今月10日から始めた。ザリガニの成分を混ぜない肥料でも同じものを栽培し、生育状況や収量、糖度などを比較している。
同博物館の町田善康学芸員は「外来生物への関心が高まるきっかけになれば」と話す。
ウチダザリガニは1930年(昭和5年)に食用として摩周湖に持ち込まれた後、道内各地に広がった。在来種のニホンザリガニなどを捕食することから、環境省は3年前に特定外来生物に指定した。