アメリカザリガニは田んぼの厄介者だ。あぜを掘って穴をあけ、水漏れを起こす。水を無駄にし、農薬や肥料が流出して不作にもつながる。だが従来、実態や対策の研究はほとんどなかった。
農村工学研究所(つくば市観音台)の若杉晃介研究員(33)は、つくば市松塚の水田で実地調査をした。
水田と用水路を区切るあぜを歩き、土の塊をどけて下を見る。ザリガニが掘った土を押し出して作った塊なら、下に穴がある。
08年は約4ヘクタールの水田で、直径5〜10センチの穴を153個見つけた。厚み30〜60センチのあぜを貫き、用水路に達した穴も十数個あった。
漏れる水の量を試算すると、30アールの水田で最大1日129トンに達した。田に補給する水は通常、1日最大90トンだから大被害だ。
対策として、あぜと水田の間に、ザリガニが貫通できないプラスチックシートを地下70センチまで埋め込むことを提案している。実地調査の結果、ザリガニの穴の深さは、平均で地表から25センチ、最大で1メートル。70センチまで埋めればほとんどの漏水が防げるとみられる。
シートは従来も使われてきたが、埋める深さは5センチ程度。ザリガニは楽々と下をくぐっていた。
6月から秋田県大潟村に通う。村の水田では漏水の影響で排水ポンプの電気代が年間1億4000万円にもなり、困った秋田県が若杉さんに調査を頼んだ。
村では7月末に水田の水を一度抜く“中干し”をしている。「中干しすると地下水位が下がり、ザリガニは水を求めて掘るので穴が増える。8月にまた行って調べます」と若杉さんは話している。