環境省「総合評価」入札 1者応札が7割 20年度「随契隠し」指摘も


2009 年 8 月 6 日
産経新聞

 環境省が平成20年度の発注事業で行った総合評価方式による一般競争入札で、入札した企業・団体が1者しかない「1者応札」の件数が約7割に達していたことが5日、産経新聞の調べで分かった。所管の公益法人などとの契約では、8割超に上った。不正の温床とされる随意契約(随契)に代わって政府が導入を進めた総合評価方式だが、随契と変わらない環境省の契約実態が明らかになり、事実上の「随契隠し」との指摘も出ている。地球温暖化によってエコの利権が拡大する中、環境事業の不明朗さが改めて問われそうだ。

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 20年度に総合評価方式で入札が行われた環境省(出先機関除く)の事業は計207件、契約総額は約30億6千万円。このうち69・1%の143件、金額では76・8%の約23億5千万円が、1者応札による「無競争」の契約だった。

 環境省などが所管する公益法人と独立行政法人の22団体と契約した事業80件でみると、1者応札は81・3%の65件、金額では84・7%にあたる約10億9千万円に上り、一層割合が高まる。

 22法人のうち19法人には環境省と、環境省の母体の一つである旧厚生省のOB計78人が役員・評議員として在籍し、5法人では代表者に就いている。1者応札全体では、1者あたりの平均契約数が1・8件なのに対して、OBが在籍する19法人の平均契約数は2・9件となっており、天下りの受け入れが受注に影響している疑いを数字も示している。

 入札は、低価格を示した事業者に発注するのが原則だが、通常方式の一般競争入札は、ダンピングを招き、手抜きにつながりやすいという弊害がある。その反省から導入が進んだ総合評価方式では、入札価格に発注する側の「評価」が加わるが、発注側の裁量権が大きいという問題点もある。

 また、コスト高になりがちで不正の温床とされる随契について、政府は見直しに取り組んでいるが、環境省では総合評価方式が、随契の件数を表面上減少させることに利用されていたともいえ、入札に詳しい鈴木豊・青山学院大学大学院教授(公監査論)は「事実上の随契隠しともいえるものだ」と指摘している。

 環境省会計課の話「事業には一定の質を求めなければならないので、割合が高いだけで問題とはいえない。随契隠しではない」

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【用語解説】総合評価方式

 価格のほかに、技術力や過去の実績などの要素も評価対象にして、落札者を決める入札方式。ゼネコン汚職を契機に始まった入札制度改革の一環で、「談合防止にも有効」として旧建設省が平成11年度から直轄工事で試験導入したのが、国内での始まり。発注者は、業者が提案した工期短縮などの技術を点数化して評価し、これを応札価格で割った「評価点」が最高となった事業者が落札する。必ずしも最低価格の入札者が落札するわけではないため、ダンピングによる品質低下も防止できるとされる。