アメリカザリガニ・アカミミガメ…ン?意外!おいしい 増えすぎた外来種、野生動物 食べて減らそう
2009年10月12日
東京新聞
塩ゆでにされたアメリカザリガニ。食べた参加者は「淡泊でおいしい
増えすぎた外来種や一部の野生動物の影響で生態系のバランスが崩れ、他の動植物の生息が脅かされている。捕獲するなどし処分したいところだが、命あるものをごみとして扱うことには、後ろめたさが付きまとう。ならば「せめて食べて減らそう」。そんな動きが全国に広がっている。
真っ赤な殻の「ゆでアメリカザリガニ」がテーブルに運ばれてくると、座は一瞬静まった。「これが、どぶ川や汚れた池でわが物顔にしているやつか」。そんなつぶやきが聞こえてきそうな雰囲気。参加者が小さな身を恐る恐る口に運ぶと、「淡泊でおいしい」と驚きの声が上がった。
九月末、名古屋市内の和食店で開かれた外来種を食べる集会。食したのは、愛知県豊田市産アメリカザリガニ、愛知学泉大で研究用に飼育していたミシシッピアカミミガメ、琵琶湖産オオクチバス(ブラックバス)、矢作川産アメリカナマズの四種。在来種の生息を脅かしている外来種ばかりだ。
板前さんが「初めての経験。甲羅が堅かったので、ノコギリを使いました」と料理法を披露した。カメの味はスッポン料理に、アメリカザリガニは伊勢エビに、それぞれ似ていなくもない。参加した女性は「気が重かったが、意外な味でびっくりです」と話す。
集会を主催したのは、市民団体「COP10ネット」。来年十月に名古屋市で生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)が開催されることから、市民が主体的に行動するきっかけづくりをしようと結成された。
外来種は、もともと食用やペットとして国内に持ち込まれ、自然に放たれた結果、大繁殖した。例えばミドリガメの愛称で知られるミシシッピアカミミガメ。愛知学泉大の“カメ博士”こと矢部隆教授によると、一九六六年に大手菓子メーカーが子ども用プレゼントとして初めて輸入。その後サルモネラ菌を媒介することが分かり、家庭で飼われていたカメが次々捨てられた。
矢部教授の実態調査では、都会の川や池ほど多く生息し、在来種のイシガメやクサガメを追いやっている。生息は世界各国に広がり、国際自然保護連合の「世界の外来侵入種ワースト100」にも指定されている。
集会に招かれた名古屋市出身のアウトドアタレント鉄崎幹人さん(45)は、外来種を食べ始めて六年。琵琶湖岸に置かれた「外来種回収ボックス」を目にし、「命のごみ箱だ」と衝撃を受けたのがきっかけだ。「ブラックバスがかわいそうに思えて、人間の償いとして成仏させてやろう」と食べたという。
自分で釣ったり捕獲したりして、これまでに七種類を食べ、テレビやラジオ番組で紹介してきた。鉄崎さんは「カメを食ったと言うと、『大丈夫?』と心配されることが多い」と苦笑いしながら、「カメやザリガニは悪くないのに悪者扱いされている。せめて人間的に、食べて減らそう」と訴える。