ザリガニの飼育方法
1 装置
(初心者)水槽又はバケツ
(初級)水槽、フタ、エアポンプ、エアチューブ、水中式簡易ろ過装置(水作エイト等)、敷き砂
(中級)ろ過装置以外は初級と同じ。ろ過装置は、上部式又は外部式
(初心者)
(初心者)の装置で飼育することはあまりお勧めできませんので、やむをえない場合を除き、(初級)以上の装置で飼育してください。(エアポンプが千〜二千円程度、水作エイトのような水中式簡易ろ過装置が千円程度以内で買えますので、ザリガニくんのために出資してあげてください!)
エアポンプによるエアレーションを行わない(初心者)の場合は、ザリガニの背がちょうど隠れるくらいまで水を入れてください。ザリガニは甲羅の中にあるエラで呼吸をしています。水面近くではエアレーションがなくても生存に必要な酸素量が解け込んでいるのでザリガニは生きていけますが、深いところでは生存に必要な酸素が解けこんでいませんので、酸素不足で死んでしまいます。だから、背が隠れるくらいまでしか水を入れないのです。また、これより水が少ないと甲羅が乾燥してしまって良くありません。なお、この方法では、ろ過をしていないほか水が少ないため、水がすぐに汚れてしまいます。ですから、頻繁に水換えを行ってください。よく「ザリガニは臭い」と言う人がいますが、これは(初心者)の装置で飼っていて水を腐らせているからです。(初級)以上の場合では臭いことはありません。水が腐ってくると水に解けこむ酸素量も激減し、ザリガニが酸素不足で死ぬこととなりますので注意してください。頻繁な水換えといっても、ザリガニは水道水に含まれるカルキや急激な水温の変化に弱いので、これを避けるようにしてください。水を一昼夜汲み置きしておけば、カルキが抜けるし水温も水槽の水温と同じになりますので、この水を使うのが良いと思われます。
(初級)及び(中級)
(1)水槽
ザリガニは共食いをします。特に、脱皮したては甲羅もフニャフニャで動きも悪いので、簡単に餌食となってしまいます。甲羅が固まりザリガニの調子が戻るのに脱皮後数日を要するので、その間が一番危険なときです。ザリガニの共食いを避けるため、水槽内の人口(ザリ口)密度を低くしておくことがベターです。理想は水槽内の単独飼育ですが、間仕切りを使用して1つの水槽で複数匹を飼育する手もあります。理想は別として、複数匹の成体を一緒に飼育する場合、30センチ水槽では2匹、45センチ水槽では3〜4匹、60センチ水槽では4〜5匹が限度といったところではないでしょうか。これでも共食いがおきるときはおきます。流木や塩化ビニール管(植木鉢やコップも可)を入れて待避場所としてやることも共食いの防止に役立ちます。なお、当研究所では、エーハイフィックスをほぐして水中に浮かせ、待避場所を水底の2次元空間だけでなく水中の3次元空間にまで拡張してやることで高密度飼育を可能にしています。
(2)フタ
ザリガニは結構逃亡上手です。水中から延びているエアホース、ろ過パイプ、ろ過ホース等をよじ登って逃亡しますので、隙間の生じないようフタをするようにしてください。さもないと、変な場所で干からびたザリガニくんのミイラを発見するという羽目となります。
(3)エアポンプ及びエアチューブ
エアポンプを使ってエアレーションをしてやれば、水位は高くしても全く問題はありません。エアストーンだけ付けてろ過を行わない方法は(初心者)よりはマシですが、どうせならエアホースを繋げるだけで簡単なろ過もできる水作エイトのような水中式簡易ろ過装置を使用したいものです。
(4)ろ過装置
(初級)で水作エイトのような水中式簡易ろ過装置を使用する場合、(中級)よりはろ過能力が低いので、水換えも水の汚れ具合を見ながら時々行うようにします。水換えは、一度に全ての水を換えるのではなく、水槽の4分の1から3分の1の水を換えるようにします。これは、急激な水質の変化によるザリガニへのダメージを避けるということと、ろ過装置や水槽内に棲息し水の浄化に寄与しているバクテリアを殺さないということのためです。(中級)のように上部式又は外部式ろ過装置を装備すれば完璧です。上部式ろ過装置は数千円、外部式では1〜3万円程度かかりますが、ザリガニ飼育には上部式ろ過装置で十分です。ろ過装置には生物ろ材と物理ろ材を入れます。これにより、水槽水の4分の1から3分の1の水換えを1週間から10日に一度行えば十分です。ろ材の掃除は半年に1度程度やれば十分ですが、バクテリアを殺さないため、水道水でなく水槽内の水を使用して洗ってください。また、水換えとろ材の掃除を同時にやるとバクテリアの数の急激な低下をもたらすので、避けてください。
(5)敷き砂
水底に敷く敷き砂は、金魚屋で売っているようなものであれば何でも結構です。ゴロゴロとした石ころでは都合よくありませんが、大磯砂(いわゆる金魚の砂)のような目のこまかい砂利であれば掃除も比較的容易です。自然界では、一般にザリガニは砂地や礫地よりも泥地を水底とする湖沼に生息していますが、水槽内で飼う場合には泥地の再現は困難でしょうし、砂場の砂のように微細な砂も掃除をする際に不便です。敷き砂はザリガニに歩きやすい場を提供するだけでなく、バクテリアの棲息場所ともなります。
その他、流木や塩化ビニール管を入れてやるとザリガニは喜びます。流木は隠れ場所を提供するだけでなく、ザリガニの非常食ともなります。塩化ビニール管を適当な長さに切って沈めておくと、ザリガニは好んで待避場所とします。当研究所では、見栄えを重視してブルーのグラスを沈めていますが、内部が滑りやすいのがやや難点です。水草を入れると、エサとして食すため直ぐにハサミでズタズタにされてしまいます。見栄えを重視して水草を入れるのであれば人工水草を入れてください。(人工であるにもかかわらず、長いうちにはザリガニにかじられて縁がほぐれてしまいます。)
2 水
水道水を水槽に投入する場合は、一昼夜汲み置くか、テトラコントラコロラインやハイポのようなカルキ中和剤を使って、カルキを無毒化する必要があります。重金属を無毒化するテトラアクアセイフのような薬品は通常使用する必要はないと思われますが、心配であれば使用してください。
ザリガニを飼い始める際、水槽にろ過装置をセッティングして稼動させてから、バクテリアが定着するまでに数日間を要します。ザリガニを入れるのは、数日間待ってからにしてください。待てない場合は、熱帯魚屋で売っているバクテリア含有水やバクテリア繁殖促進剤を使用するのも一つの手です。
エアレーションをしていれば水位は水槽の上の方まで入れてかまいません。
換水は、上で述べたとおり、水の汚れ具合に応じ、1週間に1度から10日に1度の割合で水槽の4分の1から3分の1程度を換えてやればよいでしょう。その際、急激な水質の変化や水温の変化が起きないよう注意してください。水質や水温の急激な変化に伴い、ザリガニが脱皮を行うことがありますが、このような脱皮は不自然な脱皮であり、ザリガニの健康にとって好ましくない状態が発生した場合の緊急措置と解せるので、このような事態の起きないことを心がけましょう。
水温は、日本の通常の温度に適応しますので、ヒーター等を使用する必要はありません。戸外で飼育している場合、冬には零度近くまで水温が下がることがあるかもしれませんが、ザリガニは10度以下になると活動が鈍り、そして冬眠状態になります。秋から冬にかけて徐々に水温が低下していけば、良好な冬眠状態に入り死ぬことはありません。また春になって水温が徐々に上昇すれば活動を開始します。もちろん、ザリガニの身体が凍るようなことになれば死にますが、そうでなく良好な冬眠状態に入っていれば例え零度に近づいても死なないようです。ただし、15度あった水温が急激に零度近くなったり、またその逆に急激に水温が上昇したり、あるいはこれが短期日の間に繰り返されるようであれば、環境の急激な変化に適応しきれずにザリガニは命を落とすことになりますので注意してください。
また、日本の通常の温度に適応しているとはいっても、夏季に30度を超すと、水質も悪化しやすく、溶存酸素量も低下しがちで、さすがにザリガニもバテやすくなります。あまり水温が上がるようであれば、熱帯魚屋で売っているような冷却ファンを使って水温の上昇を防ぐのも一つの手です。
3 エサ
ザリガニは、雑食性で植物質のエサも動物質のエサも食べます。自然界では、デトリタスを主食とし他に魚などの肉などを食べています。デトリタスとは、落ち葉等が水底に堆積し腐敗したもので、ザリガニはデトリタスの植物質自体とデトリタスに付着している菌やバクテリアを栄養源としています。ザリガニの養殖場では干し草を投入してデトリタスの代用としているようですが、この方法を水槽という狭い空間での飼育に用いることはお勧めできません。干し草の腐敗に伴い水質が急速に悪化するとともに溶存酸素量が激減するためです。
エサは、沈降性の金魚のエサや熱帯魚のエサ(浮上性のエサではザリガニの手がとどきません。)などが良いようです。例えば、プレコのエサやコリドラスのエサです。最近はザリガニの専用エサ(100グラム入り千円)も売られています。常に同一のエサを与えていると飽きがくるほか栄養に偏りがおきますので、いろいろなバリエーションを加えるのがよいようです。また、カモンバやアナカリスなどの水草も食べます。流木も良くかじりますので、保存食として良いと思いますが、これがどの程度の栄養となっているかは不明です。メダカや小赤などの小さい金魚も一緒に泳がせておくと、ザリガニの食べ残しの掃除係を兼ねた活きエサとなります。腹が減ると捕食します。小赤は熱帯魚屋で肉食大型魚のエサ用に一匹20円〜30円ぐらいで売っています。また、ザリガニの歯は結構固く、タニシやアップルスネイルのような巻き貝を生きたまま入れておくと、腹の減ったときなどに貝ごと食べます。