覆面座談会 第3弾!

おことわり
本コーナーは、実際に行われた議論を再現したものですが、ざりがに.COM運営者の意見を反映するものではありません。
日時 :2006年2月15日
場所 :東京 新宿区某居酒屋
参加者:A氏、B氏、C氏、D氏(各氏とも匿名希望)


A氏「改正外来生物法施行令が2月1日に施行され、2週間ほど経ちましたが、皆さん未だ憤懣やる方ないですか? それとも少し落ち着きましたか?」


C氏「少し冷静になった頭で特定外来生物のリストを眺めてみても、やはりザリガニが常識の範囲を超えて広範にやられたという感は否めませんね。ケラクス属44種、アスタクス属5種、ウチダザリガニ、ラスティークレイフィッシュ、合計でザリガニは51種が指定されてしまったわけですが、他の生物をみても、ザリガニ51種の多さは際立っています。爬虫類や両生類では、カメ1種、トカゲ2種、ヘビ3種、カエル6種だけですし、昆虫類はテナガコガネ8種とアリ4種だけです。近年人気のクワガタやカブトムシは全てセーフです。魚類も全体で13種だけで、熱帯魚の殆どはセーフです。鳥類だって全体でたったの4種ですよ。」

B氏「やはり、ザリガニ51種指定については、不自然さを感じざるをえません。どうしてこうなったのか、一度検証してみる必要がありますね。有識者会議の4人の委員の誰かがアンチ・ザリガニだったのかもしれませんし、環境省野生生物課の担当者がアンチ・ザリガニだったのかもしれません。誰か暇のある方、環境省野生生物課に情報公開法にもとづく開示請求をして調べてくれませんか?」

D氏「私は、先の指定について、ザリガニ指定の「3つの怪」と呼んでいます。1つ目の「怪」は、絶滅が懸念されているアスタクス属が指定されたことです。ヨーロッパにおいて絶滅の危機に瀕しているザリガニが我が国でどうやって生態系の脅威になるというのでしょうか? アスタクス属が指定されたのは、とっても変です。2つ目の「怪」は、ケラクス属の「全種」が指定されたことです。ケラクス属約44種のうち、その3分の2以上について、この私でさえ見たことも聞いたこともありません。皆さんも同じだと思います。誰も見たこともないような多くのザリガニがなぜ特定外来生物に指定されたのでしょうか? 変ですね。3つ目の「怪」は、数あるアメリカザリガニ科のザリガニの中で、一体なぜラスティークレイフィッシュだけが指定されたのでしょうか? 国内でも殆ど流通していないこの種だけが指定された理由がわかりませんし、ラスティークレイフィッシュという殆どの日本人が知らない俗称も使われています。全くもって不自然です。」

C氏「1つ目の「怪」についてですが、ヨーロッパのアスタクス属は環境破壊やザリガニ病により壊滅的な打撃を受け個体数が激減したのは有名な話です。今では絶滅危険種リストであるIUCNレッドブックに記載されているくらいですが、環境省はこの基本的なことをまさか知らないわけではないでしょうね。環境省のホームページでアスタクス属の解説ページがありますが、この超有名な事実について触れられていないのは変です・・・。それどころか、「ターキッシュクレイフィッシュは繁殖力が高く、個体群増加速度が速い」と逆に繁殖力の高さが強調されているのは何か意図的なものを感じます。」

B氏「アスタクス属が環境破壊やザリガニ病で壊滅的な打撃を受け、それに追い討ちをかけたのが、ザリガニ個体数の減少を穴埋めするためにアメリカから導入されたシグナルクレイフィッシュ、すなわちウチダザリガニの台頭です。それなのに、環境省のホームページでは、アスタクス属のノーブルクレイフィッシュが駆逐されたのを、同じくアスタクス属のターキッシュクレイフィッシュのせいにしていますが、犯人の主役はシグナルクレイフィッシュの方ですよ。アスタクス属ではありません! いずれにせよ、絶滅が懸念される稀少種アスタクス属全種を特定外来生物に指定したのは、本当にナンセンスとしか言いようがありません。環境官僚はもっと勉強してもらいたいですね。というか、不勉強のまま暴走してほしくありません。百害あって一利なしです。」

A氏「2つ目の「怪」、ケラクス属全種が指定されたことですが、前々回の座談会で誰かが、オーストラリア産だからやられた、オーストラリアは外来ザリガニの禁輸政策をとっているので、相互主義の観点から日本がオーストラリア産ザリガニの禁輸をやっても文句を言わない、すなわち貿易摩擦の火種になる心配はないから指定されたのだと発言していましたが、そのとおりでしたね。だから、ケラクス属44種の内訳を一々吟味することなく、一からげエイヤっと指定してしまったのでしょう。乱暴なやり方です。アメリカ産は350種類もいるのにウチダとラスティーだけ指定されたのは、アメリカが怖いからじゃないかというのはまさにそのとおりでしたね。先日NHKで放映されたクローズアップ現代「クワガタが危ない」で、くしくもそれが暴かれたわけですが、皆さん見ましたか?」

C氏「はい、見ましたよ。外国産クワガタを特定外来生物に指定することを見送った理由として、野生生物課長がインタヴューに登場し「貿易摩擦の火種になることを恐れた」と発言していました。まさに、馬脚を現しましたね。やっぱりそうだったのかと改めて思いましたよ。」

B氏「私はあれを見て、思わず「バカヤロー!」と叫んでいました。環境省の課長がああいう発言をしてはいけません。環境省は、純粋に生態系への影響だけを考えて指定をするべきであって、貿易摩擦への配慮云々は環境省が言うべきマターではありません。自然保護事務所長を永年やっていて中央に出てきたばかりの所謂「解っていないオッサン」の発言なら仕方ありませんが、中央官庁の課長があれでは・・・。やはり○流官庁なのでしょう。」

D氏「ウルサイところは指定から外しているという化けの皮が結局剥がれたわけで、返す返すも残念なのは、ザリガニ愛好家団体がおとなしく、当局のされるがままであったことです。全国組織を自認するザリガニ愛好家団体があるわけですから、あそこが派手に騒げばもう少しマシな結果になったことでしょう。少なくとも輸出入業者やオーストラリア大使館を味方につけて騒ぐべきだったですね。そのくらいの戦術は誰でも考えつくものです。ザリガニ図鑑で入った印税を懐に入れないで、そのような活動の資金に使って欲しかったですね。」

C氏「それにしてもあのNHKの番組はひどかったですね。外国産クワガタがブームとなり、色々な種類のクワガタがペットとして輸入され、その一部が野に放たれたことにより、生態系に脅威となっている、特にクワガタの外来種と在来種との間に雑種が誕生しており、F2だけでなく、F3、F4も誕生しているといった内容で、外来クワガタの脅威を煽っていました。しかし、そう簡単に昆虫の雑種ができるわけがありません。地球上には複数種のクワガタが重複して棲息している地域が沢山あり、もしそう簡単に雑種ができるのなら今頃地球上は雑種だらけになっているはずです。」

B氏「ザリガニだって同様で、もしそう簡単に雑種ができるのならば、350種類ものザリガニが多重的に棲息しているアメリカ大陸では、雑種だらけとなり、何千年何万年という年月を経て、今頃何万種何億種にもなっているはずですよ。人工的な遺伝子組み換えなら話は別ですが、自然界ではそう簡単に昆虫やザリガニの交雑は起こらないはずです。遺伝子組み換えの話と頭の中がグチャグチャになっているのではないですかね? こっちが素人だと思って馬鹿にしていますよ。」

A氏「3つ目の「怪」の、なぜラスティークレイフィッシュという超マイナーなザリガニが特定外来生物に指定されたかということですが、全くもって解りません。ラスティークレイフィッシュは、成長しても10センチ以下の小さなザリガニで、色も目立たぬ褐色でペットとしては特段魅力がありません。何も禁止しなくたって、あれをペットとして飼おうなんて考える奇特な人は殆どいないでしょう。」

C氏「そのような地味なザリガニであるがゆえに、アメリカでは釣り餌としてしか利用価値がなく、釣り餌としてよく使われているわけです。本来の棲息地以外で釣り餌として使われた結果、釣り針から外れて逃げたり、釣り終了時に余ったので捨てられたりして、在来種と競合して問題を起こしています。恐らく、そのような記事を環境省の担当者がどこかで読んで、ラスティークレイフィッシュは大変な害悪を及ぼすザリガニだと思い込んでしまったのではないでしょうか?」

B氏「日本で釣り餌にするために、わざわざアメリカからラスティークレイフィッシュを輸入する馬鹿いるわけありません。国内にアメリカザリガニがうじゃうじゃいるので、それを使えばいいわけですから・・・。環境省のお役人様には、もう少しじっくり勉強してもらいたい、本心からそう思いますよ。」

B氏「そういえば、2月7日の朝日新聞夕刊に「ウチダザリガニ珍味ピンチ」という記事が出ていましたね。阿寒湖ではウチダザリガニを「レイクロブスター」の名で売り出し、帝国ホテルやオテル・ドゥ・ミクニなど一流レストランで使われているが、特定外来生物に指定されたので、生きたままの販売が出来なくなったと伝えています。「後から出来た法律が、なりわいを侵すのはおかしい」という漁協の批判や、「もっといるアメリカザリガニは規制対象ではないのに」という漁業者の不満が載せられていました。環境省野生生物課の長田啓移入生物専門官は「アメリカザリガニは蔓延しすぎて指定の効果が薄い。趣旨を理解してほしい」と話しているとありましたが、何言ってんだと思いましたよ。ブラックバスは蔓延しているのにもかかわらず指定したくせに、全く指定の基準が支離滅裂なんですから。」

C氏「その朝日新聞の記事によれば、ウチダザリガニは、戦前、水産庁が国内に移植したものが広がったと書かれています。元はといえば国がバラ撒いておきながら、いきなり「国民が飼養、保管、運搬したら懲役刑だ!」というのはヤクザなやり方ですよ。自分で蒔いた種なんですから、まずは国が防除の努力をせっせとやって、もうこれ以上方策はないという最後の段階になって初めて、国民のペット愛護の権利を剥奪することを考えるべきでした。」

D氏「日本の食文化にもマイナスの影響を与えるでしょう。ウチダザリガニは、食用ザリガニとして味もいいので、ヨーロッパやアメリカではとてもポピュラーで、高級料理で使われるだけでなく、ザリガニ・ホーム・パーティーもよく行われています。カニやエビといった甲殻類は鮮度が一番ですから、浜ゆでしてから冷凍して送られてきたものなんて、かなり味が落ちているはずで、食べたくありません。パスタやパエリャの上にのっているザリガニがそういう鮮度の低い魚介類だということとなると興醒めですよね。」

C氏「同じく特定外来生物に指定されてしまったケラクス属のマロンも、食用としてはとても有望種でしたが、誠に残念です。オーストラリアでは食用として盛んに養殖されていますが、伊勢海老ぐらいの大きさになる日本産マロンをぜひ腹一杯食べたかったですね。ザリガニではありませんが、上海ガニも指定されたので、今後は生きたものを購入できません。鮮度の落ちた上海ガニを食べざるをえなくなりますが、これも残念なことです。」

A氏「最後は食べ物の話となりましたが、終始一貫していたのは環境省批判ですね。せっかくの旨い酒が不味くなってしまいました。次回はもっと美味しい酒を飲みたいものですね。」