覆面座談会 第11弾!

おことわり
本コーナーは、実際に行われた議論を再現したものですが、ざりがに.COM運営者の意見を反映するものではありません。
日時 :2013年1月17日
場所 :東京中央区東銀座某イタリアンレストラン
参加者:A氏、B氏、C氏、D氏(各氏とも匿名希望)


A氏「テーブル席でさえ1か月以上前から予約が必要だというこの人気イタリア料理店で、直前予約で個室がとれたというのは本当にラッキーだったと思います。今年は、我々ザリガニ愛好家にとって良いことがあるかもしれませんね。新年会として幸先が良い・・・。」

B氏「近頃ザリガニに関するニュースもめっきり少なくなり、実にマイナーな存在になってしまったなとしみじみ感じておりましたが、2か月前にちょっと反響を呼んだニュースがありました。埼玉県でアメリカザリガニを違法に捕獲し、年間1000万円、10年間で1億円稼いでいた男が逮捕されたというニュースです。」

C氏「はいはい。ザリガニってそんなに儲かるものなのか?という驚きがネットを飛び交っておりました。「年収300万円時代」という言葉が流行る時代ですから、ザリガニで年収1000万円と聞けば、誰でも驚きますよね。1日平均3万円ぐらい稼いでいますから、一匹50円〜100円でペットショップなどに卸していたそうなので、1日400匹ぐらいはコンスタントに捕獲していたという計算になります。」

D氏「ペットショップで売っているアメリカザリガニは、ペット用というよりも、肉食生物のエサ用として売っているわけで、私もアロワナのエサ用に以前利用していたことがあります。高価なアロワナを傷つけないようザリガニのハサミをあらかじめ切断してからアロワナ水槽に投げ込むわけですが、それが切なくてねえ・・・。槍で刺され弱らせてからマタドールと戦わせられる闘牛と同じでね、人間様の都合でハンディつけられて必ず負けて死ぬことが運命づけられているわけですから、当の本人いや本ザリにとっては無念でしょう。だからやめました。」

A氏「確かにねえ、イヌ・ネコなどの高等動物でしたら動物愛護管理法でそのようなことは虐待として禁止されていますが、さすがにザリガニまでは保護されていませんからねえ。ザリガニまで保護するとなると、日本人の大好きな、タイやイセエビの活き造りやその他魚介類の踊り食いまで禁止しなければなりません。ちなみにオーストラリアでは、活き造りや踊り食いはれっきとした動物虐待行為としてお縄になりますから、当地の日本料理店ではこういったものは出しません。やっぱり捕鯨禁止に力を入れる国は違うなと思います。」

D氏「変な話ですが、我が家のアロワナにザリガニと金魚を同時に与えると、必ずザリガニを先に食べにいきました。しかも、とても美味しそうな顔をして食べるので、ははあ、アロワナ様にとってもエビ・カニといった甲殻類は美味しいんだなあって思いましたよ。」

C氏「人間様と同じですね。築地の魚河岸では、アメリカザリガニがキロ2000円、毛ガニ並みの高値で取引されているそうです。最近は、IKEAの北欧風ザリガニパーティーも有名になってきたし、フレンチやイタリアンのレストランでも築地から仕入れたアメリカザリガニを使用しているところも結構あります。この店はどうしているのかなあ? あとでシェフの落合さんに聞いてみますか。」

B氏「アメリカザリガニではない輸入モノを使っているところも多いようですが、輸入モノとなると冷凍なので、日本産活きザリガニに比べ鮮度がガタ落ちで美味くないですね。日本人は、どうもアメリカザリガニに対して偏見があるようで、汚いもの、臭いものというイメージを持っている人が多いようです。先日、「女性の頭皮の臭いはアメリカザリガニの6倍」という記事を見て笑ってしまいましたが、これなどはそういう偏見の現れです。記事の数値を見てもわかりますが、アメリカザリガニは本来臭くはありません。臭いのは、飼い主が単に水を腐らせているだけです。アメリカザリガニが可愛そう。」

D氏「アメリカのレストランのバイキングなんかで、よくアメリカザリガニが山盛りに盛られていて、アメリカ人が美味しそうにパクパク食べています。「この泥くささが、美味いんだ。」なんて言いながらね。」

C氏「埼玉県のアメリカザリガニで1億円稼いで逮捕された男の話に戻りますが、ネット上では、在来生物に驚異を与えている外来生物を沢山捕獲して一体どこが悪いのか?といった意見も多く出ていましたね。むしろ功労者ではないかと・・・。」

B氏「確かに、捕獲されたアメリカザリガニは、ペット屋経由でアロワナや亀などのエサとなり、一部は人間様も喰ったかもしれませんが、いずれにせよ殆どのアメリカザリガニはあの世行きとなったことが予想されます。移植したわけではなし、むしろ駆除したのと同じ。その数も膨大。一匹50円〜100円、平均75円として、1億円では、(スマホで計算しながら)133万匹。なんと133万匹も駆除したことになりますね。これはすごい数ですよ。あれだけ予算と人員を動員してビッグプロジェクトでやっているウチダザリガニの捕獲でさえ、2010年は15万匹しか捕獲できませんでした。一人の人間で10年間で133万匹も駆除したとなると、これはすごい数字です。ビッグプロジェクトに匹敵する数を一人で捕獲していたということになります。」

A氏「報道によれば、逮捕された男は、埼玉県が漁業調整規則で禁止している編み目5ミリ以下のウケを使用していたということですが、ウケとは、ビン胴といえば皆さんよくご存じだと思います。魚やエビを捕る仕掛けで、網でできていればその編み目が5ミリより大きくなくてはなりません。埼玉県漁業調整規則第26条により、「うけ目五ミリメートル以下のうけ」「ガラスうけ、箱うけ又はこれに類するもの」の使用は禁止されています。これらのウケは釣り具店でもよく売っていますので、使用に際しては注意が必要です。ビン胴もダメですし、最近ペットボトルで作ったものを使っている人を見かけますが、これもダメです。」

C氏「この件では、タレコミすなわち通報があって警察が動いたと報道にありました。漁業権や入漁権といった既得権益を持っている者がタレコんだのではないかと思います。ある意味出る釘が打たれたとも言えますが、何も5ミリ以下の網目でなくて、合法的なもっと大きな網目でもザリガニは捕れたのにね・・・。いずれにせよ、ペットボトルで作ったビン胴でさえも違法は違法です。微罪逮捕の道具に使われないともかぎりませんので、シロウトの皆さんも気をつける必要がありますね。」

B氏「エサには、ドッグフードを使っていたという記事を見て笑ってしまいました、というか、ナルホドと思いました。ザリガニ飼育にもドッグフードは使えるなと・・・。」

D氏「さて、話題が変わりますが、ザリガニ・バッシングも終に極まれりというか、トドメを刺すようなニュースが出ましたね。世界中のカエルに壊滅的打撃を与え今世紀最大の脅威となっているのがツボカビ病ですが、その病原菌たるツボカビを拡散させている張本人がザリガニであるという記事でした。それによると、実験室環境でツボカビをザリガニに付着して感染させると、3分の1が死んだが3分の2は生き残り保菌者となったということです。ザリガニが釣りエサなどとして人為的に移動させられることにより、保菌ザリガニのツボカビが運ばれ、世界中のカエルにツボカビ病が拡散しているに違いないという記事です。」

C氏「そりゃあ、ザリガニは、恐竜が出現する以前のパンゲアの時代から、気候変動や地殻変動をものともせず、大陸移動にも乗っかって、恐竜が死滅した後も、ずうっと生き延びてきた強い生命力をもった生物なのだから、ツボカビなんかにヘコタレませんよ。だからといってツボカビ拡散の犯人扱いされちゃあ、かなわないなあ。ザリガニの生命力の強さからいって、何もツボカビだけではない、調べてみれば他の病原菌についても、実験室内で無理矢理感染させられたって、きっと死なずに保菌者として生き延びることでしょうよ。だからといって、あらゆる病気の感染の元凶だなんて言われたら、ザリガニさんが可愛そうだよ。」

B氏「しかし、この記事を載せたのがナショナルジオグラフィックなものだから、そのインパクトは無視できませんね。ザリガニ・イコール・悪玉というイメージが更に増幅されて、ザリガニ・バッシングに拍車がかかりそうです。両生類を危機から救うという名目で、外来ザリガニの規制が強化され、フロリダブルーやミステリーなど全ての外来ザリガニの飼育が禁止されるかもしれません。この機に乗じて、アメリカザリガニまで規制に乗り出すかもしれませんよ。」

D氏「ナショナルジオグラフィックをよく読むと、「カエルが壊滅的被害を受けた地域の中にはザリガニが全く生息していないところもあり」「ほかの宿主の可能性についてもう少し広く調べてみる必要がある」と最後のところで小さく書いてあるのですよね・・・。これって、法廷では完全に推定無罪ですよ。しかし、ナショナルジオグラフィックもここまでアンチ・ザリガニ派に染まってしまったかと、愕然としてしまいました。特に英語版ですね。日本語版の見出しは、「カエルツボカビ症はザリガニが拡散?」と「?」マークが付いている分多少は良心的です。しかし英語版の見出しには「?」マークは付いておらず断定的に読めます。」

B氏「そのまま世界のメディアが引用したものだから、ザリガニにとってはまさにトドメでしたね。もうこうなってくるとザリガニ愛好家も絶滅ですかね? キリシタンが江戸時代にたどった運命と同じように、信仰を捨てるか、隠れザリガニストになるか・・・。」

C氏「隠れザリガニストなんて切ないなあ・・・。金があればザリガニ・ヘイブンへの亡命も可能なのだが・・・。」

A氏「アベノミクスで先行きは多少明るくなったかと思いましたが、今年もやっぱりザリオタの世界は先行き不安ですか? それではお開きといたしましょう。」