ウエスタン・オーストラリア州では、農業用水池、専用池、水槽などで飼育されてきたが、水槽では、栄養を補う完璧な餌を欠くことと高密度下で成長が鈍化することなどにより、飼育の成果には限りがある。農業用水池や専用池での飼育は、ウエスタン・オーストラリア州では広く行われている方法であるが、両者の効率性についてみれば大きな違いがある。
投餌しない農業用水池では、飼育するマロンの数量にもよるが、通常1ヘクタール当たり年間100〜300キログラムしか生産できない。(モリシー1980年論文)
他方、準集約的(セミ・インテンシブ)な実験用専用池では、飼育するマロンの数量にもよるが、毎日の投餌により、1ヘクタール当たり年間1000〜4000キログラム生産できた。(モリシー1980年、1992年a論文、モリシー他1995年a論文) 良く設計され管理された商業用池における1ヘクタール当たり年間2000キログラムという数字は、マロンの価格にもよるが、商業的にみてもかなり魅力的である。準集約(セミ・インテンシブ)池では、排水設備を備え、マロンをグレード分けするので、管理者にとっては生物的にも経済的にも生産性を最大化できる。
様々な池が使用されてきたが、ウエスタン・オーストラリア州のマロン・スタッフ・チームは以下のものを推奨する。準集約(セミ・インテンシブ)成体池は、大きいほど単位面積当たりの建設費は安くなるが、1000平方メートルの広さが良く、それ以上の広さでは管理が難しくなる。溶存酸素増大のため、池の横幅は最大20〜25メートルまでとし、縦方向を風向と同じ方向にとる。(図4参照)
池の底床は一番浅いところで水深1.5メートル、一番深いところで水深1.75メートルとし、その間にスロープを設ける。底床と側壁は固めるとともに、掃除が容易となるように、底床は、石灰石、ケツ岩、砂礫で固める。その上に、シェルターを提供するため、1000平方メートル当たり100〜200束の人工水草を備える。底床には3平方メートルの排水口を設け、収穫を容易なものとするとともに、次のストックを入れる前の掃除を容易なものとする。(モリシー1992年a論文参照)
マロンの池は、道を挟んで隣り合うように配置する。池にはパドルホイール式のエアレーションを備えるとともに、一定量の水を補填して蒸発や浸透により失われる水を補う。(モリシー1992年a論文)
適当な水量が確保でき、土が吸水性でないことが、場所を決める際の重要な要素となる。準集約(セミ・インテンシブ)成体池には、野鳥防止用ネットを張り、天敵から守るための人工的なシェルターを備えることが必要である。また、マロンが脱走することを防ぐとともに、ネズミ等の陸棲動物の侵入を防ぐため、周囲にフェンスを張り巡らすことが必要である。(モリシー1992年a論文、オーサリバン他1994年論文)
成体池には、予定収穫量にもよるが、冬にマロンの幼体を1平方メートル当たり3〜5匹の割合で入れる。(モリシー1992年a論文) マロンの生産高を決めるうえで投餌計画は重要な要素となる。(モリシー1995年a論文参照)